研究プロジェクト

非共有結合系分子科学研究

研究プロジェクト・リーダー

富永 圭介 教授

研究の概要

物質は単一の分子から細胞・組織にいたる階層構造をなすが、現代化学は分子集合体や高分子などの複雑系の相互作用、構造、動的な挙動、またそこから出現してくる機能の機構の解明にある。電子や原子核の運動をつかさどる原理はきわめてシンプルであり、すでに確立されて久しい。これら単純な原理・原則で記述できる電子や原子核が多数集まると、複雑、かつ特徴的な構造や動的な振舞い、構造が出現する。この「一般性、単純性」から「特殊性」への出現機構を解き明かしていくことが現代化学の最重要課題のひとつである。例えば、たんぱく質は水素結合やイオン間の静電相互作用を巧みに使い、特徴的な3次元構造を作る。この3次元構造は周辺の水と相互作用しながら熱揺らぎをエネルギー源として構造を変化させ機能を発現することができる。産業応用を考えても、新しい医薬品の開発では、薬剤(レセプター)と標的となるたんぱく質が多点で相互作用し、分子認識としての機能を発揮することにより、ある特定のたんぱく質のみを捉えることができる。これらの系では、弱い分子間の相互作用が多点で作用することによる。

本研究では、生体高分子を研究対象として選び、計測手法を中心としたグループ、生物化学的な手法を中心としたグループ、大型計算機を用いる精密理論計算のグループ、が連携し、生体高分子の構造、機能、ダイナミクスを明らかにする。その際、分子間や分子内における弱い相互作用や熱エネルギーによる揺らぎなどが、注目するキーワードとなる。これらの問題を解決するために、具体的には、

  1. 分子会合、自己組織化のメカニズムの解明
  2. たんぱく質と水和水の相互作用の解明
  3. 分子会合体や超分子、生体高分子の構造や動的挙動を探索する新しい手法の開発
  4. たんぱく質と生体膜の相互作用の解明

等の問題を3つのグループが協力して研究していく。例えば、電子スピン共鳴法により病原たんぱく質の結合構造、分子運動、反応性を解析し、酸化ストレスのプローブとしての分子機能を明らかにする。これによりアミロイドβと薬物相互作用の解析を可能にし、将来的にはアミロイド病の創薬の基盤として活用できるようにする。

研究体制としては、分子フォトサイエンス研究センターと理学研究科化学専攻が中心となるが、化学専攻には連携講座として高輝度光科学研究センター(SPring-8)と計算科学研究機構(京コンピュータ)が研究・教育に携わっている。これら兵庫県下の研究機関からの研究プロジェクトへの参加もあおぐ。さらに人間発達環境学研究科からも加わる。

  1. 計測開発グループ:
    新しい常磁性電子スピン共鳴法の開発とそれによる電子状態や分子構造の解析(小堀、立川、太田、 大久保、大道、髙橋)
    高性能超短パルスレーザーとそれを用いた先端的分子分光による分子集合体の揺らぎと動的挙動の解明(富永、秋本)
    X 線回折による生体高分子、分子集合体の構造解析(岩本、佐藤)
  2. 生物化学グループ:
    アミロイド線維形成原理の解明と制御(茶谷)
    生体酸化還元反応に関与する膜タンパク質の構造と機能(鍔木)
  3. 精密理論計算グループ:
    大型計算機による生体高分子の構造、相互作用、機能発現の機構の解明(林、中嶋、田中)

構成員

氏名 職名 所属・専攻
研究プロジェクト・リーダー 富永 圭介 教授 分子フォトサイエンス研究センター、
理学研究科・化学専攻
研究分担者 鍔木 基成 教授 理学研究科・化学専攻
小堀 康博 教授 理学研究科・化学専攻
太田 仁 教授 分子フォトサイエンス研究センター、
理学研究科・物理学専攻
田中 成典 教授 システム情報学研究科・計算科学専攻
秋本 誠志 准教授 理学研究科・化学専攻
茶谷 絵理 准教授 理学研究科・化学専攻
大道 英二 准教授 理学研究科・物理学専攻
大久保 晋 准教授 分子フォトサイエンス研究センター、
理学研究科・物理学専攻
立川 貴士 准教授 分子フォトサイエンス研究センター
髙橋 英幸 助教 先端融合研究環
木村 哲就 特命講師 理学研究科・化学専攻
研究参画者 佐藤 春実 准教授 人間発達環境学研究科・人間環境学専攻
岩本 裕之 教授
(連携)
理学研究科・化学専攻・連携大学院、
高輝度光科学研究センター 主幹研究員
中嶋 隆人 教授
(連携)
理学研究科・化学専攻・連携大学院、
理化学研究所計算科学研究機構 チームリーダー
林 倫年 教授 国立台湾大学
TAPIA Alvin Karlo Garcia 助教 国立フィリピン大学ロバニョス校

研究の概念図

非共有結合系分子科学研究の概念図